「電撃オンライン TYPE-MOONスタッフが語るPS2版『Fate/stay night』の“今” 」

奈須:制作の準備期間がファンディスクの『Fate/hollow atarxia』の開発と重なっていたので、脚本としてしっかり参加するかあくまで脚本監修になるかという選択を最初に迫られました。ライターとして、やはりファンディスクのほうに力を入れなければ、という
ことで後者を選ばせていただきました。それから監督さん、シナリオチームのリーダーさん、自分の3人で集まり、『Fate』の全ルートをやるのか一部のルートをやるのかという話をしまして、製作さんの満場一致で1つめのルートをやりたいということになり、1ルートを全24話で割ることになりました。全体構成として「こうすれば24話で割れますよ」という案を提示しました。あとは毎週行われる脚本会議にご意見番として参加した、といった感じです。
(中略)
奈須:アニメから入った方には、映像性を重視したアニメとは違う、細かい部分をまず楽しんでいただきたいですね。また、アニメでは明かされなかった伏線や、アニメにはなかった展開を純粋に楽しんでほしいと思います。(中略)
武内:奈須とだいたい同じ意見ですね。やはり、アニメでは語られなかった部分、アーチャーの正体などを楽しんでいただきたいなと思います。
(中略)
――アニメ版は、基本的にはPC版どおりにストーリーが進んでいますよね。
奈須:はい。ただ、おいしいギミックがあるときには、自分や武内のほうに話を振っていただいて、設定面なら僕が、ビジュアル面に関しては武内が返事を差し上げたという感じですね。また、ボーイ・ミーツ・ガールをメインにするという話になったとき、原作の要素を全部入れたら24話に収まらないため、宝具・魔術・世界設定といったギミックは自然とカットされていました。

やはり、セイバーが基本で、他のルートは匂わす程度というのは、当初からの予定だった模様。
そして、その匂わせただけの伏線がPS2版を売るときの売り文句になると。
やはり、アニメ版はPS2版の露払いという位置づけが結果としては適当だろうなぁ。

――キャスティングの方にもかかわられましたか?
奈須:キャスティング決定の会議に参加させていただき、好き勝手に要望を言わせていただきました(笑)。セイバーを川澄さんに演じていただくというのは、武内からのたっての願いでした。僕もそれには賛同し、これに関してはすごくわがままを言わせていただきましたね。
――川澄綾子さんを選んだ理由というのは?
奈須:美しい声で気品があり、それでいて少女っぽいところもあるあるからでしょうか。
武内:わりと最初から川澄さんのイメージがあったのですが、やはりセイバーは声の中に強さが欲しかったというのがありますね。川澄さんが別のアニメで似たような役を演じられていたのを聞いて、かわいいし、かっこいいし、高貴な感じがすると思っていました。その後、音響監督の方も川澄さんのアニメを持ってきて「この声どうだろう」と言われたときは、“やっぱり似たような感じで考えるんだ”と思いましたね。

武内さんが言う似たような役って、やはり「星界」の「ラフィール殿下」だろうか。
だとしたら、「星界」を見ていた「Fate」好きとしては、すごく分かる選択だけど。

――そこまで中田(穣治)さんの起用にこだわられた理由はなんなのでしょう?
武内:好きだからですね(笑)。
奈須:TYPE −MOON作品では同人時代から皆勤賞なんですよ。「空の境界(奈須氏の同人小説。のちに講談社ノベルとして発売される)」でドラマCDを作ったとき初めて中田さんにお会いしたのですが、すごいナイスボイスなのと、ご本人がとてもいい方だったので、ぼくらはもうそのときからメロメロになっちゃいました(笑)。
武内:セリフは3つくらいしかなかったのですが、あの分厚い上下巻をちゃんと読んできてくれたんですよ。
奈須:まだぼくらが同人時代だったときですよ? やるからには作家が誰でも関係ない。ちゃんと役を演じるからには作品をきちんと読んで、自分なりに答えを出すというあり方にしびれました。

さすが、穣治。そこにしびれる、憧れる!

――なるほど。桜役の下屋則子さんについては?
奈須:すごくいい声をしています。例えるならハニーシロップ。あの声だったら桜がどんな事をしても許す(笑)。
――アニメ版は藤ねえの暴走も印象的でした。
奈須:短い出番ながらもエネルギッシュに活躍していますね。スタッフに藤ねえ好きが多いのと、声優さんの伊藤美紀さんが素で藤ねえみたいな人なので、キャラが合ったのかも……や、伊藤さんすみません(笑)

両キャスティングとも非常に納得。桜は確かにあの声なら許します。黒くても。